Sydney Pollack, Tootsie (1982)


 ちょっと昔のニューヨークの町並みが観ていてすごく楽しい。
 女の子のフリをしていたら「あなたといるとすごく安心するの・・・」と言われてヒロインと仲良くなってしまい、正体をバラすにバラせなくなって――というクロス=ジェンダー系のラブコメの定型はいつ始まったのだろう。
 男が女のふりをしていたら、世の女性たちの共感を集めて、というのはNathanael WestのMiss Lonely Heartsあたりが元祖かもしれない。
 
 シナリオだけで見ると、佳作止まりの作品であるように思う。特に、ラストで二人がくっつくのには、いろいろと考えるとかなり無理がある気がするし。しかしながら、本作はとにかくそのラストシーンが最高。モジモジと気まずそうにもう一度彼女にアプローチするダスティン・ホフマンを正面から映すショット。少しずつ緊張がほぐれて、友達から友達以上恋人未満になる二人。どちらも人生の成功者ではないが、二人一緒ならちょっとだけ元気に生きていける気がする。フィルムの少し黄身がかった淡い感じが、画面にさらに優しさを付け加えている。そこにDave Grucinの美しい音楽。背の低いダスティン・ホフマンだからこその、女が男の肩に手をかけて雑踏を歩いていくラストショット。
 いやー、ほんと良いですね。ここだけ何十回も見返したくなります。

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