リゼロ

 本当にいまさらながら、『Re: ゼロから始める異世界生活』を観はじめた。てっきりタイトルからして、流行の異世界召喚モノの一種にありがちな「異世界でいかにして生活基盤を構築してゆくのか」というマインクラフト・イズムの作品だと思っていたけど、どっちかというと『All You Need Is Kill』型の死んではやり直す「覚えゲー」方式作品だった。
 というか、『リゼロ』の場合、『ALL』そのものに依拠しているというよりも、(マリオやダクソといったアクションゲームとともに)『ALL』が参照していたであろうサウンドノベルゲーの世界観で作られている。まだ七話までしか見ていないのだけれど、序盤のストーリーが解決してからは閉鎖された「屋敷」の中で起こる「殺人」(この場合は被害者は主人公自身)の謎を解く、という形式と、主人公を取り巻く怪しい居住者たちという図式など。特にメイド姉妹については、ノベルゲーに疎い私でも『月姫』という先達をすぐさま想起したし、それゆえにこの姉妹に隠された本性があるのだろうというところは予想できた。
 それはともかく、『リゼロ』は面白いと思う。会話の奇妙さや女性キャラクターの造型などオタク向けコンテンツ特有の世界観そのものは凡庸なんだけど、戦闘シーン及び(というか本作においてはほぼイコールの)死亡シーンに入った時のものすごいスピード感とグロテスクな演出が良い。のんびりした日常パートから、事件パートへの移行のギャップが利いてて、それが快感になる。特に、毎話からならず最後にグッと引き込まれる展開を起こして次週へと繋げるのがめちゃくちゃ上手い。確か一話の最初で主人公が「はいはい、そこでこのシーンで引きなのね」的な漫画分析をしているところから始まったと思うのだけれど、この作品は週刊漫画の「引き」の技術をアニメにおいてやるというのがテーマとしてあるのだと思う。
 ところで、最近の異世界召喚モノには他にも『ソードアートオンライン』『ログ・ホライズン』『オーバーロード』と良作が揃っている。しかも全部Web漫画原作というのがすごい。『ログホラ』や『オーバーロード』が異世界での生活構築系なのに対して、『リゼロ』は『ソードアート』が持っていたピリピリとした緊張感とわりとハードな演出を共有している。異世界召喚モノがなぜおもしろいのかといえば、それはエンタメの帝王であるハリウッド映画がもっとも得意とした「文化ギャップ」型コメディの形式と同じだからだ。『スミス都会へ行く』とか『星の王子ニューヨークへ行く』とか、ある集団の中にまったく異なる出自をもつキャラクターを一人放り込むというというのは、まさに「黙っていても面白くなる」たいへんオイシイ設定なのだ。
 まぁ上記の『リゼロ』以外は「ゲームの世界」に転移するところが新しかったので、そういう意味では『リゼロ』はわりと古典的な設定とも言えるかもしれない。古典といえば、どうやら彼を召喚したのが「魔女」らしいというところも、『オズの魔法使い』的な裏テーマがあるのかもしれない(召喚された場所が「東」の国と明示されているしね)。

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