Chattanooga Choo Choo とタップダンス

 「ムーンライト・セレナーデ」と並びグレン・ミラー楽団最大のヒットソングである「チャタヌーガ・チュー・チュー」は1941年のミュージカル映画 Sun Valley Serenade の中に初登場する。ちなみに、チャタヌーガはテネシー州の山間にある、川沿いのとても美しい小さな町。町の目抜き通りにはいまでも当時の駅舎が残っていて、「チャタヌーガ・チュー・チュー」とか「チュー・チュー・トレイン」が観光客に喧伝されている。
 映画の舞台であるサン・バレーはアイダホ州の町で、クリスマスのスキー場でバンドマンと少女が恋に落ちる、みたいな話(らしい、観てないので)。


まぁ本人たちにその意識はないのだろうけれど、こうして白人だらけの「ジャズ」バンドをみると、当時の「白い」アメリカがどれほど黒いアフリカ文化にあこがれているというか、ヤラレテしまっているのかがよく分かる。
 で、半分ほど過ぎたところで、本当に唐突に黒人の女性シンガーと男性タップダンサーがキレッキレのパフォーマンスを始める。タップといえばアステアのイメージのある私にとってはなかなか新鮮だった。しかも漂白されたジャズバンドの後に突然彼らが現れるので、まるで白黒の文化が反転したような目眩を覚えた。
 バンドマンたちと黒人パフォーマーたちは同じ場所で音楽を共有しているはずなのに、画面はきっちりと明確に区分されてしまっている。しかも、白人バンドが物語に一応関係するのに対して、この黒人たちはまったく関係しない。突然現れて、パフォーマンスが終わるとそのまま物語から姿を消してしまう(What the Eye Hears: A History of Tap Dancing)。しかしながら、彼らの圧倒的な魅力を考えると、観客としては純粋にそのパフォーマンスを愉しんでいただろう。ここでもやはり、白いアメリカは黒いアフリカを猛烈に愛してしまっているのだ。
 面白かったのは、黒人ダンサーのタップのリズム(そして歌、体の動きもすべて)がかなり鋭いビートを刻むのに対して、バックでソロをとっている白人ミュージシャンたちのリズムにはクラシック的なゆったり感がどうしても支配的で、両者のビートが絶妙に合っていないところだ。まぁ、どっちが優れているということではなく、やはりそこにはまだ両者の文化的バックグラウンドの違いからくるあらゆる感性のズレが残っているということだろう。もちろん黒人のリズム感は非常にビバップ的なので、私は個人的にそっちが好きだけど。

ちなみに黒人ダンサーは Nicholas Brothers で歌手は Dorothy Dandridge という大女優。

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