蔵原惟繕『憎いあンちくしょう』(1962)

このセンス抜群のジャケットを見てください。まるでゴダールの映画みたいじゃないですか?実際、裕次郎のアパートは青・赤・黄などのパステルカラーが特徴的で、二人のちょっとバカみたいな演技がかったやりとり、恋人同士の倦怠感などはとてもゴダール的だし、なんなら途中からひたすらドライブシーンが続く「アメリカ映画オマージュ」みたいなところも同時代のヌーヴェルヴァーグっぽさがある。
 冒頭の手持ちカメラの移動は最近だと『バードマン』、あるいは裕次郎の無軌道な感じを表すための表現主義だとすれば『仁義なき闘い』を観ているかのような臨場感がある。「真実の愛はあるのか」というキリスト教的なおおげさなテーマも、昔の映画ならではのケレン味として面白いし、60年代の日本の景色、これどうやって撮ったの?って思うような大群衆のいるロケ撮影、さすが日活というべき激しいカーアクションとうねるカメラワークなどなど、まぁとにかく見どころ満載。
 浅丘ルリ子は2018年の新人女優と言ってもまったく違和感のないみずみずしい美しさ。全体にダラダラした部分があるけど、ドキドキし続けるために「キスすらしない」ことを決めていたのに「倦怠期」に陥ってしまったカップル、というテーマを表現しているとすれば、この「やきもき」と「溜まっていく」感じも納得。そして最後はギラギラと焼け付く太陽の輝く青空の下での野外セックスというね。こういうぶっ壊れたかんじが、映画のいいところですよ。
 『バニシング・ポイント』、『ウィークエンド』、『ガントレット』、『トラフィック』なんかと並べて置きたい傑作「車映画」(必ずしもカーアクション映画ではないことに注意)。
 それにしても、繰り返すけどCriterionのジャケットは本当にセンスが良い。

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